「自分のため」に買うのか「他人のため」に買うのか。(前編)
先日デートで、和歌山近代美術館に併設された「BRING BOOK STORE」へ行った。
私はカフェ・チャイを注文した。
牛乳の甘みが、美術館を回って疲れた体に沁みる。
本がたくさん置かれており、自分の席へ持って行ってOKということであった。
美術館の中ということもあり、ほとんどが美術に関する本であったが、
私が手に取ったのはこちらの「0円ハウス」。
ホームレス達がゴミや落とし物を集めて作った家の写真集である。
私はこういうのが好きだ。
ホームレスになりたいわけではないが、「お金がなくても知恵があれば生きていける」という、
資本主義から抜け出せるような考え方が好きだ。
太陽光発電でラジオやテレビを見れる家、
理想の女性の絵を描くために仕事を辞めた人、
ホームレス同士で集まって談笑する姿を見て、
正直「羨ましい」と思ってしまった。
当然生きていくのに苦労するのは私たちもホームレスも同じだ。
しかし流れる時間が違う。
ゆったりとした時間を過ごしているように感じる。
そうしてページをめくると、終盤のページに唐突にタワーマンションの写真を見せられる。
「0円でこんな家を作られるのに、お前達はこんなもののために一生懸命苦労しているんだ」とでも言うように。
(続く)